配管腐食診断
概要
人類が砂鉄から鉄を取り出す方法を発見し、その鉄を道具として使用するようになって以来、人類と腐食の戦いは始まった。
日常こんなことが起こっていませんか?
1. 毎朝、蛇口(水栓)をひねると「赤水」が出る
「赤水」が出ると、配管の中は赤さびが山のように付いています。
内視鏡によるの写真
切断面の写真
2. 塩化ビニルライニング鋼管(VLP)を使っているのに「赤水」が出た。
VLPで「赤水」が出ると、配管の中は管端部に赤さびがリング状に付きます。


「赤水」とは?
鉄のさび(腐食生成物)が水に溶けて着色することです。鉄の濃度が1.0mg/l以上になると肉眼で赤く感じるようになります。飲料水の水質基準では鉄の濃度は0.3mg/l以下です。
3. お湯を使うと、「青水」が出たり、洗面器やタイル、浴槽に青いしみが付く。
青水の現象は新しい配管からが多いものです。これは新管には未だ保護皮膜ができていないことによります。通常は1年ぐらい経てば直りますが、そうでない場合は下記のことが考えられます。
配管の中を見ると、「孔食」では緑っぽいものが点々と付着し、その下はすり鉢状の形になります。
「青水」とは?
給湯管に銅管を使用したとき青水が発生すると言われています。しかし、一般にこういう問題の場合に現場の水を透明のガラスのコップに入れて見ても青くは見えないことが多いものです。肉眼で水が青く見えるには、約100mg/l以上の銅イオン(水質基準は1.0mg/l以下)が含まれなければならず、水道水でこのような多量の銅イオンの溶出を生じることはありません。では、なぜ水が青く見えるのでしょうか。それは湖や海の色が青いのと同じ水の性質によるもので、太陽光線の可視光線のうちエネルギの小さい光は水中や容器の壁で吸収され、人間の目には青っぽく見えるものだからです。また最近は浴槽などがカラフルになっているのも、青く見える要因の一つと考えられます。しかしながら、確かに浴槽やタイルの目地などが青く変色している場合を見かけることがあります。この原因は、水に溶け込んだ微量の銅イオン(1mg/l程度でも生じます)が石鹸や垢に含まれている脂肪酸などと反応し、青色の不溶性銅石鹸を生成し付着するからです。また、このほか付着した水の蒸発などにより、銅イオンが濃縮して蓄積されたものとも考えられます。
配管の中を見ると、「孔食」では緑っぽいものが点々と付着し、その下はすり鉢状の形になります。
全体
断面
「孔食」とは?
孔食とは直径数mm以下の微小部分に腐食が集中するもので、塩化物イオンなどの腐食性イオンの作用によって、安定した保護皮膜の一部分が破壊された場合に生じます。この腐食の孔食部の上部には腐食生成物が認められます。鉄(鋼)の場合には赤褐色の腐食生成物、銅の場合には緑青色の腐食生成物が認められます。
「潰食」では金属の地肌色になり、馬蹄形状にえぐられるようになります。
全体
断面
「潰(かい)食」とは?
潰食は流体の流速が速いときなどに発生し、馬蹄形状にえぐられるように腐食する現象で、孔食と違って損傷面に腐食生成物が見られないのが特徴です。潰食は流速と関係のあることが知られていますが、定量的には完全に把握されていません。建築設備では銅を使用した場合によく問題になります。銅の場合、目安として流速を1.0m/s以下にするとよいでしょう。潰食の発生部位は、水の流れが急激に変化する曲がり部、継手部、弁の下流側、管径の変化する下流側です。特に、給湯の銅配管では強制給湯循環方式の給湯返管で給湯循環ポンプサクション側近傍曲がり部分に多く見られます。
4. 以前に比べて水の出が悪くなった。
水の出が悪くなると配管の中は赤さびで一杯になっています。
内視鏡による写真
切断面の写真
5. 排水の流れが悪くなり、時々ゴボゴボと音がする。
排水の流れが悪くなると、配管の中は異物が一杯詰まっています。
内視鏡による写真
排水管の腐食
排水管は特殊排水(産業廃水、実験排水など)を除けば、給水管のように錆こぶを生じたり、腐食を発生したりすることはほとんどありません。これは流水中に周囲の空気を巻き込み溶存酸素が過剰なぐらいあるからです。そのうえ排水管の内面に不溶性の腐食生成物質が付着して不動態が形成されたり、またはタンパク質などの有機物が吸着して保護皮膜が出来ると言われ、しかも排水管の環境条件ではそれらが破壊されることがほとんどないことに起因していると言われています。
ただ接合部でネジの影響等で腐食が発生したり、また流水の衝撃を受けるような曲がり部などにおいて潰食が発生したりすることがあります。
したがって、排水管では上記の付着物による詰まりが大きな問題となります。
6. 弁類やその付近に異物などが付着していたり、水が漏れている。
弁や弁付近の配管の中を見ると、弁のタイコや管に赤さびが付着しています。


弁の腐食
弁は形式や材質による種類が数多くあり、使用条件、環境条件も異なる広い範囲で使用されています。そのため弁自体だけに限らず周辺の腐食(配管など)との関連も見逃すことは出来ません。弁の腐食は弁棒、弁座に多く発生し、特に青銅製の弁で弁棒が黄銅製である場合は脱亜鉛腐食が起こり、弁棒の先端部が折損する事例が多くあります。また、弁を絞った場合などの潰食、あるいは弁自体や配管から生じた錆こぶによって、弁が閉塞される事例も見受けられます。
脱亜鉛腐食
青銅製の弁は本体が青銅鋳物と弁棒が快削黄銅または鍛造用黄銅の組み合わせで用いられています。以前は給湯配管として亜鉛めっき鋼管が主に用いられていましたが、近年になって銅管が多く用いられるようになり、弁などに脱亜鉛腐食の事例が見られるようになりました。これは鉄配管に比べて銅配管では、黄銅製弁棒の電位が卑になる(腐食しやすくなる)と考えられています。脱亜鉛腐食は黄銅中の亜鉛が優先的に溶解腐食し、多孔性の銅だけが残る現象です。この腐食は30%亜鉛以上のイエロー黄銅で生じやすく、15%亜鉛以下の赤色黄銅で生じにくいといわれています。材質面では微量のAs, Sb, Pの添加や、最近ではSn, Niを添加した材料も開発されています。水質面では水の停滞する閉止弁で多く、遊離炭酸の多い井戸水、酸性の工業用水などの不純物(CO2, Cl−)の多い水で発生しやすくなっています。また温度が高いほど促進されます。
7. 弁のハンドルを開けても水が出ない。
弁の中を見ると、弁棒が切断されています。


8. 蒸気の還管から水が漏れている。
蒸気還管の中を見ると、管の肉厚が全体に薄くなり、ネジ部では穴があくことがあります。


蒸気還管の腐食
蒸気還管の腐食は炭酸によるもので、早いものでは竣工後1年以内に発生するものも少なくありません。これは空調用蒸気ボイラの補給水をイオン交換樹脂を用いて軟水処理する結果、水中の硬度成分(Ca(HCO3)2, Mg(HCO3)2)がイオン交換され、水溶性の重炭酸塩(主としてNaHCO3)の形で軟水として補給されるためです。この重炭酸塩を含んだ軟水はホットウェルタンク(HWT)に流入しますが、HWT水が65℃以上の高温であれば、重炭酸塩の一部は式(1)のように分解し、炭酸ガスを発生します。
2NaHCO3 → Na2CO3 + H2O + CO2↑ ・・・・・ (1)
ここで、発生した炭酸ガスの一部は、軟水中の溶存ガス(炭酸ガス、窒素、酸素など)の一部とともに、HWT水面上の空間に放出されます。
HWTで未分解の重炭酸塩も給水とともにボイラに入れば、その高温のためにすべて式(1)の反応によって分解されます。さらに、炭酸塩の一部は式(2)のように分解して、炭酸ガスを発生します。
Na2CO3 + H2O → 2NaOH + CO2↑ ・・・・・ (2)
ボイラへ持ち込まれ、あるいはボイラで発生した炭酸ガスは、蒸気とともに配管中に移行し、式(3)のように還管中で再び還水中に溶解し、炭酸を形成します。
CO2 + H2O → H2CO3 ・・・・・ (3)
この炭酸(H2CO3)は水中で式(4)のように解離します。
H2CO3 → H+ + HCO3− ・・・・・ (4)
この結果、還水のpHは低下し、式(5)のように配管材の鉄と直接反応して腐食を発生させます。蒸気還管の腐食は、腐食生成物の発生が少なく、還水の流れる管底面がなめられたように平均的に肉厚が減少するのが特徴です。これは、還水のpHが炭酸によって低下し、腐食生成物が還水中に溶解し、錆こぶを形成しないためです。
Fe2+ + 2HCO3− → Fe(HCO3)2 ・・・・・ (5)
この重炭酸鉄は水中に溶解し、さらに水中の溶存酸素が共存すれば、式(6)、(7)のようにそれと反応して酸化鉄Fe2O3(赤さび)ないしFe3O4(黒さび)になります。
4Fe(HCO3)2 + O2 → 2Fe2O3 + 8CO2↑ + 4H2O ・・・ (6)
6Fe(HCO3)2 + O2 → 2Fe3O4 + 12CO2↑ + 6H2O ・・・ (7)
この酸化鉄が鉄表面に沈殿すれば、非沈殿部の鉄が腐食し、非沈殿部が局部的であれば孔食を生ずることがあります。
これらの現象を調査して、最良の対策を実施します。
それがダイダンの『配管腐食診断システム』です。